「いらっしゃいませ!」「これください」「100円です」。さっきまで積み木を並べていた場所が、いつの間にか子どもたちのお店に変わっています。誰かが店員になれば、誰かがお客さんになり、紙で作った食べ物や身近な玩具が商品へと早変わりします。大人から見れば何気ないごっこ遊びですが、その中では想像する、相手に伝える、順番を考えるなど、さまざまな経験が生まれています。こうした日常の姿を含め、子どもたちがどんな時間を過ごしているのかは、大和高田の保育園の毎日をのぞくことで、園生活を思い描く一つのきっかけにもなります。
ごっこ遊びの面白いところは、最初から完成した筋書きがないことです。
一人の子が「ここはお店ね」と言う。
すると別の子が「じゃあジュース作る」と応える。
さらに誰かが箱を持ってきて、「これはレジ」と決める。
子どもたちの一言が重なるたびに、遊びの世界が少しずつ形になっていきます。
そこでは、いつもの積み木が電話になったり、丸い紙がお金になったりします。
本物と同じ道具がなくても構いません。
「これをあれにしてみよう」と考えること自体が、想像する楽しさにつながっています。
ただし、遊びがいつも思い通りに進むとは限りません。
「私がお店屋さんをする」
「ぼくもやりたい」
同じ役をしたい子が二人いれば、そこで遊びが止まることもあります。
そんなときに、「二人とも店員にする?」「交代したらどうかな」と考える。
子ども同士で相談する場合もあれば、大人が少し言葉を添える場合もあります。
自分のやりたいことを伝えるだけではなく、相手にもやりたいことがあると気づく。
ごっこ遊びには、人と一緒に遊ぶための経験がたくさん含まれています。
また、子どもたちは普段の生活をよく見ています。
買い物に行った経験。
料理をしている家族の姿。
病院でのやり取り。
乗り物に乗ったときの出来事。
そうした日常の記憶が、ごっこ遊びの中に現れることがあります。
「お待たせしました」
「次の人どうぞ」
大人が何気なく使っている言葉まで再現されることもあり、子どもの観察力に驚かされる場面です。
そして、同じ遊びでも日によって内容は変わります。
昨日はお店だった場所が、今日はレストランになる。
そこへ椅子を並べればバスになり、さらに誰かのアイデアで旅行が始まる。
一つの遊びが終わったのではなく、経験したことが次の遊びにつながっていきます。
大人が最初から「今日はこれを作りましょう」と完成形を決めなくても、子ども自身の発想から遊びはどんどん広がります。
保育者は、その広がりを支える役割を担います。
必要になりそうな素材を用意する。
子どもが困っていれば少しだけヒントを出す。
友だちとのやり取りが難しいときには、お互いの思いをつなぐ。
しかし、大人が遊びの方向をすべて決めるわけではありません。
「次はどうなるんだろう」と一緒に楽しみながら、子どもの発想を待つことも大切です。
ごっこ遊びには、目立った完成作品が残らないこともあります。
遊び終われば、積み木も紙も元の場所へ戻ります。
けれど、その時間に交わした言葉や、友だちと考えたこと、思い通りにならなかったときに工夫した経験は、子どもの中に残っていきます。
園生活の魅力は、大きな行事や特別な活動だけにあるものではありません。
「ここ、お店にしようよ」。
そんな何気ない一言から始まった遊びの中にも、子ども自身が考え、人と関わり、新しい世界をつくり出す時間があります。
想像したことを形にしてみる。
友だちの考えを取り入れてみる。
昨日とは違う遊びを今日また生み出す。
自由な発想が誰かの発想と出会い、予想もしなかった遊びへ変わっていく。その楽しさを毎日の中で味わえることも、たくさんの仲間と過ごす園生活ならではの魅力です。