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些細な褒め言葉の力

もう40年以上も前の話です。その頃、私は幼稚園の年少でした。私の母はPTAの役員をしていて、幼稚園の終わりに、教室に残って打ち合わせをしたり、何かの作業をすることが多いため、私も幼稚園に残り、絵本を読んだり、積み木で遊んだりして時間を潰していました。ある時、教室に数人集まって作業をしていた先生の一人に隣の教室からハサミを持ってくるように頼まれました。暇をもてあましていた私は元気に返事をして、ハサミを取りに行きました。先生の机の上から大きなハサミを手に取った私は、すぐに隣の教室に戻り、先生にハサミを差し出しました。その時、私は特に何も考えずに、刃を持ち、刃先を自分側に向けて差し出したのです。それを見た、先生が「●●くん。えらい! ちゃんとハサミの渡し方知ってるんだね。かっこいい! そうだよね。刃を人に向けたら危ないもんね」と、満面の笑顔で言ってくれたのです。普段は少し怖い先生だったので、その先生に褒められたことがとても嬉しく、それ以降、どんな場面でもハサミを渡す時には刃先を持つようにしながら、いつもその先生から褒められた言葉を思い出すのです。幼稚園の先生ですから、子どものいいところを見つけて褒めることが当たり前なのかもしれません。それでも、どんな些細なことでも褒められた方は一生忘れないこともあるのです。